ステラおばさんとアーミッシュ

肌寒くなると、暖かい飲み物と共に濃厚な味のクッキーが食べたくなる。ステラおばさんのクッキーを好きで良く購入しているが、ステラおばさんはペンシルバニア・ダッチカントリーで幼稚園の先生をしていた実在の人物で、クッキーやパウンドケーキを焼く名人だったという。
ダッチカントリーは、17世紀に、宗教迫害を逃れてきたドイツ系開拓移民が住みついた土地で、その中心、ランカスター郡には、聖書の教えに忠実にしたがって生きるアーミッシュと呼ばれる人々が入植当時と変わらぬ暮らしを続けている。
「アント・ステラ(ステラおばさん)」事業に着手したジョセフ・リー・ダンクルも、ペンシルバニアに生まれ、ステラおばさんからアーミッシュの話を聞いて育ったようだ。彼の著書アーミッシュの贈り物』は、アーミッシュの暮らしを春夏秋冬にわけて綴ったアーミッシュ入門書とも言える本だった。アーミッシュの格言や、料理のレシピ、道具の紹介なども織り込まれ、写真があればもっと良かったな、とは思うのけれど、代わりに豊富な挿絵がアーミッシュの暮らしを想像する手助けをしてくれた。

本の中に、アーミッシュの13歳の女の子の文章が紹介されていたのだが、宮沢賢治を連想させるようで印象的だった。アーミッシュの素朴で飾らない美しさが象徴されるような文章だと思う。

When I grow up…(わたしが大人になったら)
もしも、神様がわたしに体力と、健康と、能力をお与えくださるなら、人に手を貸し、一生懸命働きたい。
だれかが手助けを必要なら、わたしは、喜んで手伝いましょう。
それは、畑を耕したり、とうもろこしを刈り取ったり、また、作物の種まきのときなど。
乳搾りや納屋でのほかの雑仕事もすすんで片づけましょう。
うちの中に関して言えば、わたしはパンやお菓子を焼くこと、お料理、保存食作り、それと縫い物の才能があると信じています。
わたしは、親切な、信頼に値する、宗教心の厚い人になりたいと思います。
また、目立つことなく、地味な、恥ずかしがり屋でありたいと思います。
自分が他の人より優れているという気はありません。
いつでも鳥や花や風景など、この世のすべての創造物に目をとめ、心を傾けていきたいと思います。もちろん、ひまなときだけ。(ジョセフ・リー・ダンクル著『アーミッシュの贈り物』)


ペンシルバニア・ダッチ・カントリー―アーミッシュの贈り物

ペンシルバニア・ダッチ・カントリー―アーミッシュの贈り物