2008-01-01から1年間の記事一覧

ベロックの映画

観てしまうのがもったいないと思っている映画や、読んでしまうのがもったいないと思っている小説や漫画があるのだが、その中のひとつであったルイ・マル監督『プリティー・ベビー』をついに観た。1910年代のニューオーリンズの娼館が舞台で、それだけでも当…

リベラーチェの功績

川本三郎著『本のちょっとの話』を読んで得た一番大きな収穫はリベラーチェという人物を知ったことだ。私は、1950年代に非常に興味を持っているので、この時代の特にアメリカに関する本や映像には出来る限り触れてきたつもりだったのに、当時人気者であった…

電子辞書ももっている

金井美恵子は、1987年に岩波市民セミナーで三日間にわたる小説論の講義を担当したらしい。その内容は金井美恵子『小説論−読まれなくなった小説のために』で確認できるのだが、金井氏が岩波市民セミナーの講師をしたことがあったなんて意外であった。今後もそ…

古書好きにオススメ

『チャーリング・クロス街84番地』は古本や古書店好きに是非ともオススメしたい映画だ。アメリカに住む作家の女性ヘレーヌとロンドンの古書店で働く人々が、ヘレーヌによる古書の注文をきっかけに、手紙や贈り物のやりとりを頻繁に行うようになり心を通わ…

ちょっとかわいい魯庵先生

鴻巣友季子著『明治大正翻訳ワンダーランド』は、今ほど外国の情報を入手しやすくなかった、そして読者にも外国に関する知識がそんなに浸透していなかった明治大正期、翻訳家たちがどのように外国語を日本語に翻訳したのかについて多くのエピソードが詰めら…

ヴィジョンズ オブ アメリカ

TO TAKE A PICTURE OF SOMETHING OR SOMEBODY YOU'VE NEVER TAKEN BEFORE OR ARE AFRAID OR AWE OF・・・(かつて自分が撮ったことのない被写体、あるいは恐れを抱くもの、または畏敬の念を抱く対象を撮るかのように)先月、東京都写真美術館の「ヴィジョン…

舞踏会へ向かう三人の農夫

次にやってみたい仕事は英語を使った仕事で、そのためには一人で出来るリーディング、リスニングの勉強以外にもライティング、スピーキングの能力も身に付けなければと学校に通うことにした。今度こそ本気で英語勉強するぞ!! 読書もしばらくは英語圏の文化…

e.o.プラウエンとは

愛嬌のある絵に惹かれて購入したe.o.プラウエンの『最高だね!ヒゲ父さん−いつも一緒に歩いていこう』。父と子の日常を描いた人間味とユーモア溢れるドイツの漫画である。私が購入したのは、全三巻シリーズの第三巻だ。 全世界で愛されている漫画のようだけ…

原台詞

『TOKYO STYLE』や『賃貸宇宙』で有名な都築響一氏、やっぱり目のつけどころがいつも面白いな、と思う。今回読んだのは、『夜露死苦現代詩』。正統現代詩としておそらく認められてはいないけれど、使う本人たちも詩とはあまり意識していないかもしれないけれ…

各国料理ブーム再到来

ニンニクは多くの料理に欠かせないのに、どこにも出かける予定がない休日の前日でなければニンニクを使った料理を食べることを控えざるをえないのが辛いところです。 昨日の晩に食べたイラク風サラダに入れたニンニクの臭いがまだ自分から消えていないような…

ゴシックハート

ゴシック建築、ゴシックロマンスなどを好きだという自覚がある。中世風の古城や修道院、廃墟、人形、怪物、分身等のキーワードにも心惹かれる。ゴスファッションの人がいたりすると何となく好感を持って眺めしまう。自分自身がゴスファッションに身を包んで…

客車内の共同性

西垣通著『メディアの森―オタク嫌いのたわごと』は、副題が「オタク嫌いのたわごと」となっているけれど、オタク嫌いの意味がわかったのはやっとあとがきを読んでからだった。この副題で手に取るのを控える人も多そうだけれど、文字とグローバリぜーションに…

簿記検定をなめてました。(附:簿記のルーツ)

最近、簿記の勉強をしています。「その快楽がいちばん、金のかからぬような人間こそ最も富める者である」と言うようなソローや、清貧に生きたアッシジの聖フランチェスコが大好きである私は、お金に関して無頓着というわけでもなく、それなりに節約の工夫を…

ウディ・ガスリー

コーエン兄弟の『オー・ブラザー!』を観て、ウディ・ガスリーの曲を聴きたくなった。ディランに多大な影響を与えた偉大なフォークシンガー、その名だけは知っていたけれど今まできちんと彼の曲を聴いたことはなかった。 『オー・ブラザー!』に直接ウディ・…

反復にある粋?

ここのところ、「反復の魅力が少しわかるようになったのかな」と、感じている。昔は、筋を知っていたり想像出来たりするような話には全く興味を持つことができていなかった。知らない世界がありすぎて、例えば時代劇を繰り返し見たりするのはおじいさんおば…

お姫様と私

昨年亡くなった若桑みどり氏の『お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』を読んだ。ジェンダーはどんな学問をしていても到達するだろう問題ではあるけれど、彼女のことは美術史の人とばかり思っていたので、ジェンダーの分野でも幅広く活…

踏切のある風景

石田千著『踏切趣味』を読んだ。視力を失った者として、石田さんの肩に摑まりながら都心の下町をぐるぐる巡って帰って来たような気分だ。石田さんの見たものの詳しい描写が彼女の視線の移行に伴い、平均すると2行くらいで段落を変え並んだ文章なのだけれど、…

母たちの村

『母たちの村』は、ウスマン・センベーヌ監督による西アフリカの女子割礼(女性性器切除)を取り扱った映画だ。そのようなことが現在も行われている地域があるということは知識としてのみ知っていたけれど、どのように行われるのか、なぜ行われているのか、…

レッカリーとアイスワインのこと

食べたことのない輸入菓子をみると、つい味が気になりいろいろ買いたくなってしまうので、なるべく輸入食品の店に行くのを控えています。でも、先日、知人に付き添って輸入食品店に入ってしまい、案の定結構な金額になる量を購入してしまいました。 いくつか…

すてきなお母さん

ローラ・インガルス・ワイルダー、エリナー・ファージョン、ヨハンナ・シュピーリ、ケート・グリーナウェイ、ルイザ・メイ・オルコット、ルーマー・ゴッデン、ビアトリクス・ポター、ジョルジュ・サンド、イーディス・ネズビット……。目次を全て書き写したく…

元祖ゴジラ

川本三郎著『今ひとたびの戦後日本映画』を読んだ。紹介されている映画は既に観たことのあるものがほとんどだったのだけれど、映画を観ただけでは読み取ることが出来ていなかった戦後の日本人の心情や歴史的背景が詳しく説明されているこの本を読むことで、…

学生時代の自分に教えてあげたかった本

ヴァルター・ベンヤミンの『教育としての遊び』を古本屋でみつけ、300円という破格の値だったので二冊目になるけれど入手した。ベンヤミンが「はじめて満足のゆく文章」と呼んだという《経験》という文章や《学生の生活》という文章が収められており、これら…

カルスタ

しばしばカルスタと揶揄され、批判の対象になったりもしてるカルチュラル・スタディーズのこと、実はよく知らないな、と思い、マンガ版の入門書『INTRODUCING カルチュラル・スタディーズ』を読んでみた。訳者によるあとがきで推薦されている多くの本の中に…

社会の乳母

独身者たちの「近代」は、「家族」を中心とした、伝統的コミュニティを解体する。そこに「個人」が生まれる。自立した平等な「個人」のイメージは、「独身者」のイメージを影にして、「近代」の出発点に立っているのである。しかし、それは孤独な「個人」で…

フラナリー・オコナー

「フラナリー・オコナーってどんな人だったかな」と思いながら読んだジュヌヴィエーヴ・ブリザック著『フラナリー・オコナー 楽園からの追放』。フラナリー・オコナー(1924−1964)は、難病のため三十九歳で世を去ったアメリカの作家だ。この本には、彼女の…

ハシェクの風刺短編集

ヤロスラフ・ハシェクの作品は読んだことが無かったのだけれど、チェコに行った折、彼の代表作『よき兵士シュヴェイクの世界戦争中の運命』で主人公シュヴェイクが通ったとされる酒場に入ったことがあるので、機会があれば読んでみたいと思っていた。 ハシェ…

まずは3年仕事を続けなければならないのか?

競争社会を支えている基本的な感情は恐怖だと思います。暗黙のうちに存在する恐怖です。一生懸命に働き続けなければ貧乏になるかもしれない、ホームレスになるかもしれないという恐怖。あるいは、病気になったら医者に行かねばならないが、でもその支払いが…

安吾の戦後

西川長夫氏の、国民国家や戦後歴史学等に関する考えが様々な形式で収められた、『戦争の世紀を越えて―グローバル化時代の国家・歴史・民族』という本を読んだ。 坂口安吾研究会における報告がまとめられている「戦争と文学―文学者たちの十二月八日をめぐって…

Ex-Librisについて-武井氏の考え

Habent sua fata libelli.(書物は自己の運命を持つ−蔵書票の金言より)自分の持っている本に蔵書印を押したり蔵書票を貼ったりしたいという気持ちにはなったことがないけれど古本を購入し、素敵な蔵書印や蔵書票がついているとちょっと嬉しくなる。線引や書き…

ラウル・デュフィと棟方志功

木版画作品を見る度思うのだけれど、それらの作品がどれだけその地域を代表するデザインを使用したものであっても、アジア的とかアフリカ的とかヨーロッパ的だとかそういうエスニシティーを不思議と強く感じさせられることがない。素朴な表現方法自体が世界…