ラウル・デュフィと棟方志功


木版画作品を見る度思うのだけれど、それらの作品がどれだけその地域を代表するデザインを使用したものであっても、アジア的とかアフリカ的とかヨーロッパ的だとかそういうエスニシティーを不思議と強く感じさせられることがない。素朴な表現方法自体が世界共通のものであり、そのインパクトが強すぎるからだと思う。

1978年発行、ギョーム・アポリネール『動物詩集』堀口大學訳、求龍堂刊)は、ラウル・デュフィの木版挿絵を、1911年パリのドプランシ社から出された初版原寸大で味わうことの出来る有難い本だ。なるほど、デュフィの挿絵は、アポリネール「ほめよ、たたえよ 線の気高さ、力強さ」と讃えたように素晴らしいもので、これ以上縮小されたかたちでは味わいたくないと思い、また蠅や蚤まで見事に気高く美しく描かれていたのには圧倒された。読みながら終始、棟方志功のことを連想してしまったのは、木版画という表現技法を使っているからだけだろうか…。アポリネールも、もっと長生きしていたら民藝の作家たちのことを気に入ったのではないかと思う。民藝の作家たちは実際デュフィら野獣派の影響を受けているのだろうか。どのように繋がりがあるのかなど、機会があれば調べてみたい。