2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ある日

武田百合子『日日雑記』は1988年から1991年まで3年間にわたり、マリ・クレール誌に連載された文章が本になったもので、1992年初版発行、百合子さんの最後の本である。文章が必ず「ある日」ではじまるので、今日のタイトルも「ある日」。 何でもなさそうな日…

シャイロックのこと

映画『ヴェニスの商人』を観た。シェイクスピアのこの作品を読んだのはもうかなり昔の話で、ストーリーを覚えている程度だったのだけれど、映画を観たことをきっかけに、シャイロックというキャラクターの面白さが新たにみえてきた。『ヴェニスの商人』で、…

クジラの歌と新しいメディア社会

「誰も機械から逃れることはできない。機械だけが、人間を宿命から逃れさせてくれるのだから」(トリスタン・ツァラ)20世紀における<芸術>と<技術>の問題について書かれた伊藤俊治の『機械美術論−もうひとつの20世紀美術史』のなかで、とりわけ面白いと…

ゼフィレッリ監督好み

最近、私の「これは!」と思った美少女はJUDI BOWKER(ジュディ・ボーカー)だ。フランコ・ゼフィレッリ監督の『BROTHER SUN, SISTER MOON』という映画に出演しており、はじめて知った。系統としては、テレビドラマ『大草原の小さな家』のメアリー系の美少女…

アテナイの夜の鳥 Athene noctua

「ミネルヴァの梟は黄昏を待って飛び立つ」(ヘーゲル『法哲学』)という一節はあまりにも有名だ。 賢い老いたフクロウが カシの木に住んでいた 彼は多くを目で見て控えめに話した 控えめに話して多くのことを耳にした なぜ我々は賢いこの鳥のように なれな…

稀覯書のデジタル画像化

図書館や美術館によるデジタル化プロジェクトについてはかなり前から新聞でも取り上げられており、慶應大学のHUMIプロジェクト(稀覯書のデジタル画像データの制作と研究)についても気にはしていたのだけれど、今回高宮利行著『グーテンベルクの謎』を読む…

たまには実用書

年末に向けてというわけでもないけれど、部屋が散らかりすぎたので掃除をしており、「うわー、懐かしい」と思って読んだのが『脱サラの経済学』。(掃除はもちろん中断)発行年が2001年。私は、この本を就職したての2002年に買ったと思う。「脱サラ」という…

『家族の肖像』と『生きる』

ヴィスコンティの『家族の肖像』は、気難しく孤独な老教授が家族というものの良さに気付くというだけの話ではない。若者と老人、異なる世代の価値観の違いなどもこの映画の重要なファクターなのだけれど、それが深刻なものとしてだけではなく、ユーモラスに…

西鶴を読む前に…

元禄文化の庶民的で華やかなイメージは、割と好きだ。最近、井原西鶴をきちんと読みたいなと思っていて、まずは背景から…と『元禄文化−遊芸・悪書・芝居』を読んでみた。「遊び」の側からみた元禄町人文化論である。元禄期には、学問や文芸といった教養に類…

大人のための童話

オデットというと、まず思い出すのが白鳥の湖のオデット姫だ。『オデット』のオデットも、白鳥の湖のオデットのイメージとどこか重なる清らかなキャラクターである。なんて、耽美な文章なんだろう、と思いながら読み、こてこてに耽美な短い物語(「こてこて…

Hurdy-Gurdy

楽器が好きだ。音楽を聴く喜びと楽器を演奏する喜びは違うもので、音楽を聴いて「この音色良いな」と思うと、自分もその楽器を使って実際に音を出してみたくなる。楽器の値段はピンきりで、「プロではないのだから雰囲気だけ愉しめたらいいや」と思って一番…