「労働は人を自由にする」とはアウシュビッツ強制収容所の門に書かれていた言葉である

キング牧師はベーシック・インカムを要求する運動を組織するなかで糾弾に倒れた。彼は、ベーシック・インカム要求について、黒人のシングルマザーたちを中心とした運動から多くを学んだという。ベーシック・インカムとはどのようなものか。山森亮著『ベーシ…

Paris, mais c'est la Tour Eiffel(パリ、そいつぁエッフェル塔さ)

「通天閣についての本を読んでいるが、とても面白い」と知人がしきりに言うので、それならこちらはと倉田保雄著『エッフェル塔ものがたり』を読んだ。エッフェル塔は、ヒトラーやチャップリン、ジャン・コクトーが生まれたのと同じ1889年に完成している。特…

ステラおばさんとアーミッシュ

肌寒くなると、暖かい飲み物と共に濃厚な味のクッキーが食べたくなる。ステラおばさんのクッキーを好きで良く購入しているが、ステラおばさんはペンシルバニア・ダッチカントリーで幼稚園の先生をしていた実在の人物で、クッキーやパウンドケーキを焼く名人…

資料データ付きの本

1895年12月28日、リュミエール兄弟は世界最初の実写映画といわれる『工場の出口』や『庭師』をパリのグランカフェで上映した。その後シネマトグラフという新商品の販路拡大のため、専属技師たち50人ほどをメキシコや日本など世界各地へ送り出し、撮影と上映…

旬の愉しみ

『M嬢物語―鴨居洋子人形帖』を読む。彼女が作った数々の人形の写真が華やかなエッセイ本だ。鴨居洋子は下着デザイナーだけに、人形の下着も丁寧にデザインされ、どの子の下着もそれぞれ違って素敵。人形エッセイを読むと、自分と人形との関係も思い出す。3…

明治40年前後の理科教育

牧野富太郎について、昔の偉大な植物学者であるということ以外に特別な知識もなかったが、春、草花が芽吹く季節はやっぱり気分が高揚するなぁ、と植物についての興味が増したこともあり、俵浩三著『牧野植物図鑑の謎』を読んでみた。 この本は、著者がたまた…

サマセット・モームの『読書案内』

体調が悪く寝て過ごすことが多くなるとどうしても薄い文庫や新書しか読めなくなる。本棚にあった薄い本ということでW.A.モーム著『読書案内』を読んでみた。モームはここでとりあげる本について、第一にその書物が楽しく読めるという条件を求めた。ただし、…

赤い鳥の童話

坪田譲治編『赤い鳥傑作集』を読んだ。『赤い鳥』は、鈴木三重吉が大正7年に創刊し、一時途絶はするものの昭和11年まで続いた童話と童謡の月刊雑誌である。私は長い間絵本や童話から遠ざかっていたので、大人になった今子供向けのものを読むとどんな風なのだ…

痴呆を生きるということ

老人福祉の世界に興味を持ち、ヘルパー2級の勉強をしはじめたのはもう10年ほど前になる。10年前、祖母に見られるようになったもの忘れの症状が、老人福祉の世界に興味を持ったひとつのきっかけだった。現在、10年前は祖母より元気に見えていた祖父は病院に入…

三歳児神話

最近香山リカ著『貧乏クジ世代―この時代に生まれて損をした!?』も読んだが、香山リカの著書には、そのとき気になっている事にぴったりのタイトルのものが多いなと思う。 今回読んだのは『母親はなぜ生きづらいか』。タイトルから想像していた現代の母親の…

『「まだ結婚しないの?」に答える理論武装』読了メモ

伊田広行著『「まだ結婚しないの?」に答える理論武装』を読んだ。「まだ結婚しないの?」は、たいていの独身女性が(個人差はあるだろうけれど)学校を卒業したあたりから年齢が高くなるにつれて頻度を増し言われ続けることになるプレッシャーを感じさせる…

ふたりのこいびと―シャンソンと料理

料理・食の描写が上手い多くの作家の中で私が食の好みが合いそうだな、と思っているのは2年ほど前に亡くなったシャンソン歌手の石井好子だ。彼女の歌も好きなら人となりも好きでエッセイも何冊か読んでいる。この度読んだのが「ふたりのこいびと」。読みなが…

子どもと教育とベンヤミン

ヴァルター・ベンヤミン著、丘澤静也訳『教育としての遊び』は、特にこれから子育てを経験するにあたって手元に置き何度でも読み直したい本だ。私がかつてその文章と出会うことが出来たことをこの上なく幸福なことと思い、もし若い人に読むことをすすめるな…

ハーシーチョコレートと大恐慌

2月、バレンタインデーのある月だ。寒さが身に凍みる時節だけれど、冬は製造・管理・味、どの面から言ってもチョコレートに一番ふさわしい季節だ。というわけで、ティータイム・ブックス編集部編『チョコレートの本』を読んでみた。チョコレートの歴史から科…

For your first AOMORI−第二話−BORO篇

BOROをご存知だろうか。いまやアート、テキスタイル・デザインの分野では共通語で、染織美術や現代美術のコレクターがこぞって買い求めたり、ニューヨークやミラノのギャラリーで展覧会が行われるほどになっているテキスタイル・アートだ。そのBORO(ぼろ)…

川端作品と映画

佐藤忠男著『映画の中の東京』読了。東京を舞台にした映画を軸に、江戸〜昭和の映画史や人々の生活の変遷を解説した好著だった。取り上げられているのは、小津、黒沢、成瀬の有名な作品が多かったが、知らない作品があっても読むのに困らない内容。丁寧な解…

For your first AOMORI−第一話−ねぶた篇

今年も大好きなねぶた祭に行くことが出来なかった。残念なのでねぶたの本を読んだ。 安政大地震から150年、阪神淡路大震災から10年にあたる2005年には「地震鯰」というねぶたが造られたというが、東北新幹線が青森に開通して最初のねぶた祭となる今年、新幹…

ミュージカル映画が苦手な人に

舞台のミュージカルはほとんど観ないが「ミュージカル映画」(特にハリウッド黄金期の)が大好きだ。舞台のミュージカルが好きという方にはたまに出会えるけれど、「ミュージカル映画好き」という人には残念ながら今まで実際に出会ったことがない。関連本も…

【マナーの勉強】7.会社行事−世に立つ税の一つ

会社行事は、新入社員にとって通過儀礼的意味を持ってる。会社行事を通して、社員共通の目的意識を明確にし、社内の一体感と活力を高めていこうという会社は特に大手に多い。 会社行事がいかに強制のものではなかったとしても、会社行事にまったく参加しない…

【マナーの勉強】6.明治の作法

そもそも【マナーの勉強】で最初に勉強しなければならないことではあったのだけれど、マナーというか、私たちが現在正しいと思っている作法は、文明開化の波を受け、和洋混在となった日本の状態を正そうとした文部省が全国調査をし、各地の習慣などを調べ、…

【マナーの勉強】5.二十四節気

1年は四つの「季」と十二の「月」に分かれている。その時期の気象に合った名前をつけたのが「二十四節気」だ。ビジネス文書では時候の挨拶として○○の候と使われることも多く、覚えておいたほうがよさそうである。日々の物語を知るのにおすすめな本はおーなり…

【マナーの勉強】4.葬儀の費用

昨日、結婚式に必要な平均予算は約300万円と書いたけれど、今度は葬儀である。「世間並みの葬儀」に必要な額の相場はやはり約300万円だそうで、今の私には結婚も葬式も厳しいな、というのがまず単純な感想である。葬儀サービスにも松竹梅があり、これまた結…

【マナーの勉強】3.最近の結婚式

私は、仏教系の幼稚園を卒園し、キリスト教系の大学を卒業し、寺や神社をみかけるとついつい入り拝み、聖人フランチェスコが好きで明恵上人も好きなのでたいそうなことは言えないけれど、結婚式用のチャペルには違和感を持っている。現在、挙式スタイルの主…

【マナーの勉強】2.冠婚葬祭について

私にとって冠婚葬祭とは長年出来れば避けて通りたいイベントだった。マナーも知らず失礼を大分してきており、多少そのことを心苦しく思ってきたのだけれど、厄年を節目に引き続き斎藤美奈子著『冠婚葬祭のひみつ』を読みながら考えてみたい。 つまり冠婚葬祭…

【マナーの勉強】1.マナーを学ぶ心得

図書館にビジネスマナーの本を探しに行ったが、なかなかない。かろうじてみつけることができた斎藤美奈子著『冠婚葬祭のひみつ』であるが、私の好きな斎藤美奈子とは別の斎藤美奈子に決まっていると思って借りた。著者本人もあとがきに、「冠婚葬祭の本を書…

HOUDINI

アメリカでスピリチュアリズム(心霊主義)全盛の20世紀初頭、にせもの霊媒師が数多く存在し、多くの人々が食いものにされていた。そんな中、いんちき霊媒師を撲滅すべく敢然と立ち上がった男がいた。奇術師としてのヨーロッパ巡業先で最愛の母を亡くし、そ…

ジャック・リゴー

「驚くほどハンサムで、すこぶる洗練された服装、非常に神秘的な身ごなしだった」(ジョルジュ・リブモン=デセーニュ) 「シャトーブリアンやコンスタンにつながる憂愁の色を漂わせたダンディ」(ピエール・ドリュ・ラ・ロシェル) 「グループ一のハンサム…

旭太郎とは?

手塚治虫、小松左京、松本零士の三氏が大絶賛、日本のSFストーリー漫画がこの名作からはじまった、とあっては是非とも読んでおきたくなる大城のぼるの『火星探検』だが、読もうとして驚いたのは、この作品、旭太郎が原作ということだった。旭太郎とは実は…

滋賀のオリエント急行

実家に帰省するため、年に2回ほど寝台特急『日本海』を利用し10年ほどになる。B寝台しか利用したことのない私の目下の目標はA寝台を利用することだ。そんなに金額は違わないのに、ついつい切符購入段階になると安いほうを選んでしまうのだが、次こそは、と…

エコモード

今月は猛暑の中フリマに出店し、日射病になり大変だった。それでも、自分が不要になったものを、喜んでくれる人に渡すこというのは良い気のするもので、「買われたものは今頃どうしているのだろう」と、買ってくれた人の顔と共に手放したものたちのことを思…