ジャック・リゴー

「驚くほどハンサムで、すこぶる洗練された服装、非常に神秘的な身ごなしだった」(ジョルジュ・リブモン=デセーニュ)


シャトーブリアンやコンスタンにつながる憂愁の色を漂わせたダンディ」(ピエール・ドリュ・ラ・ロシェル


「グループ一のハンサムで常に非の打ちどころのない服装をしていた。かなり辛辣そうな口元をしていたが、私の考えていたフランスのダンディであり、なろうと思えば映画スターにもなれたくらいの美男子だった」マン・レイ


「彼はほとんどものを書かず、書いたとしても破棄していた。ヴァシェのように、彼は究極の意識下において反芸術家であり、束の間の他愛もないパフォーマンス以外はほとんど何も生み出そうとしなかった。彼の最もよくやるパフォーマンスで、極端に好んだものが悪ふざけだった」(マーク・ポリゾッティ)


(『自殺総代理店』ジャック・リゴー、亀井薫・松本完治訳)

ツァラブルトン、スーポー、アラゴンら過激なダダイストグループの中にあってさえ、更に異質であった彼は、第一次世界大戦でパリ輸送部隊の陸軍少尉として殺戮の最前線に立ち、無差別大量殺戮の地獄を眼前にしている。世に言う<失われた世代>である。

30歳で自殺するちょっと前は、ニューヨーク社交界でヘロインとアルコールに耽溺しながら自堕落なジゴロを演じ、金持ちでエキセントリックな多くのアメリカ人女性と交際をしていた。

彼の生き様は、親友であったピエール・ドリュ・ラ・ロシェルによって『鬼火』として小説化され、その小説が1963年ルイ・マルによって映画化されている。

二回目に自殺したのは、怠惰のせいだ。金もなく、仕事に対しては働く前から嫌悪を抱いていたので、ある日、それまでの人生同様、何ら確信もなく自殺したのだ。今日私がこんなに元気でいるのを目にしたら、この死を責める気にもなるまい。***


この私は、ずいぶん前から何かをしようと探してきた!だが何もすることがない。まったく何も。***


睡眠にこそ称えあれ。夜ごとに訪れる素晴らしい神秘だけにではなく、先のことなど何も考えないまどろみに称えあれ。眠りの友たちよ、君たちのそばにいれば、私は満ち足りた生を思い描けるのだ。***


質問:一切に対して異議を唱えながら、それでも生き続けるにはどういう手があるか、そこのところはまだ伺っていませんね。
リゴー:その日暮らし。ひもの暮らし。居候の暮らし。***


(『自殺総代理店』ジャック・リゴー、亀井薫・松本完治訳)

いかなるものにも隷属しない、言葉へさえ隷属しない、という永遠のダンディズムのため沈黙を守った彼の書いたもので残されているものは少なく、資料として入手可能な日本語の本は、現在このくらいしかなさそうだ。

自殺総代理店

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