e.o.プラウエンとは

愛嬌のある絵に惹かれて購入したe.o.プラウエンの『最高だね!ヒゲ父さん−いつも一緒に歩いていこう』。父と子の日常を描いた人間味とユーモア溢れるドイツの漫画である。私が購入したのは、全三巻シリーズの第三巻だ。
全世界で愛されている漫画のようだけれど(台詞がないので本当に世界中の人が愉しめる)、今まで全くこの漫画のことを知らなかった。
著者のe.o.プラウエンについて紹介文を読んでみると、1903年ドイツ生まれ。エーリヒ・ケストナーの親友であり、彼の民衆新聞のために働いていた人らしい。タンタンシリーズのエルジェは、1907年ベルギー生まれなので、この世界的に有名な漫画家は二人ともナチスが台頭した苦しい時代を生きている。日本で言えば『フクちゃん』で知られる横山隆一(1909年生まれ)と大体同時代だ。
ケストナーの親友だけあり、彼はもちろんヒットラーの風刺漫画を描くような人で、そのことで弾圧を受けた。このヒゲ父さんシリーズは、彼が本名オーザーではなく偽名を使って描いた作品なのだ。ドイツ中の人々に愛されたこのヒゲ父さんシリーズは、ナチスにも目をつけられ、プロパガンダに利用されそうになるのだけれど、プラウエンはきっぱり断り逮捕される。その後拘留された牢獄の中で自殺を選んでしまったとのこと。
このエピソードを知った後、改めてヒゲ父さんの漫画を読むと、過酷な状況の中で漫画を通して彼が伝えたかったメッセージをより深く考えたくなる。もちろん、そんなこと考えなくても、この漫画からは、溢れんばかりの愛情が十分伝わって来るのだけれど。思いやりや隣人愛など大切なことを子供たちに伝えようと一話、ひとコマごとに彼の気持ちが凝縮されている気がして、普段漫画を読むのが早い私にしては、珍しく読むのに時間がかかってしまった。

最高だね!ヒゲ父さん―いつも一緒に歩いていこう

最高だね!ヒゲ父さん―いつも一緒に歩いていこう