2009-01-01から1年間の記事一覧

アルバムに登場するということ

人間が「出会う」ことは、相手のアルバムの中に登場することなのだという、そんな当たり前のことを感動的にみせてしまう素晴らしい構成になっている。(伴田良輔著『奇妙な本棚』) 伴田良輔著『奇妙な本棚』の中で、ピエール&ジルの本を評した章の一部分だ…

完璧なヒロイン:山脇道子

1919年、建築家ヴァルター・グロピウスがワイマールに興したバウハウスは、1933年、ナチスによって閉鎖されるまでのわずか14年間に、クレーヤカディンスキーなど錚々たる講師陣を揃え、モダンデザインに多大な影響を及ぼすことになる思想を形成、また全世界…

レーモン・クノーと月影先生

昨年、ちょこっと翻訳の授業を受けていた時期がある。『地下鉄のザジ』のレーモン・クノー著『文体練習』を読んで、その時のことを思い出した。主人公が<I>(私)である英文を渡されて、その「私」がどのようなキャラクターなのか、老紳士なのか、主婦な…

話すのが苦手な人のための英検準1級二次試験対策

先月、英検準1級に合格しました。一度面接試験で落ちているので、二度目のチャレンジでした。英検は面接試験があるだけに、会話が苦手な私にはTOEICでハイスコアを記録するよりハードルが高く感じられていたので、ひと安心です。 準1級の二次試験は、四コマ…

すてきなホーム暮らし

雑誌サプライズを読み、城夏子という作家のことを知った。サプライズは、度々私の好きな森茉莉の特集を組んでいる雑誌なので、そこで紹介されている人や本には信頼をおいている。そこで、城さんの文章を読んでみたくなり、サプライズの編集者である早川茉莉…

最初のサイボーグ・デバイス

携帯電話を持ちはじめてから腕時計を新しく購入することがなくなった。たまに、仕事や試験で携帯電話ではなく腕時計しか使用できない場合にだけ、古い腕時計を装着しているが、長瀬唯の『腕時計の誕生』を読んで、久々に気に入る腕時計を購入したい気になっ…

手元に置いておきたい「本」

植物好きが高じて今や研究者の如くに日々野山に行き、そこに自生する植物の調査をしている母と、最近たまに一緒に植物の観察をしている。普段ドライブしながら「きれいね」と言うだけで通り過ぎている野山でも、個々の植物に注目してみると、時間帯や場所を…

「主よ人の望みの喜びよ」の人

今年は、1859年にアンリ・デュナンが赤十字の思想を提唱してから150年目のようで、郵便局ではその記念切手が販売されており、原宿表参道などでもキャンペーンが行われたようだ。 日本赤十字社の名誉総裁は美智子皇后なのだが、皇后の良き話相手であった精神…

不思議な二人

山口小夜子は、パリコレにアジア系として初採用された国際的モデルで、日本人形のような黒髪とミステリアスな雰囲気が一度見たら忘れさせない存在感を持つ。最近(といっても2007年)亡くなったので、今後なかなかみつけられないかもしれない、と思って購入…

祖母への葉書

青森新町の戦前の絵葉書を手に入れた。古本屋では昔の絵葉書、地図なども取り扱っているところが多く、古書市でも本ではなくこれらのみを目当てに来る客もいるのだけれど、私にとってこのような紙ものコーナーは、一枚一枚絵柄を確認していたら時間がいくら…

お得意さんへの昇進

前に日記を書いてから3ヶ月も経ってしまい、ログイン時のパスワードも忘れかけておりました。今まで本か映画の感想がほとんどでしたが、今日は日記らしい日記を書きたいと思います。 昨年、すごく行動力のある人と知り合い、その人の話を聞くにつけ、「これ…

セルフポートレイトな気分

CINDY SHERMANの写真集を観ながら、セルフポートレイトを彼女のように本格的に撮るのはとても面白そうだと思った。人物写真は、被写体との関係性が大きく写真に反映されるから難しい。自分を撮るのだと気を遣わなくて良いから楽だ。 考えてみると、私は普段…

Writing Can Be Democratic

ダグラス・ラミス著『最後のタヌキ−英語で考え、日本語で考える』は、『スチューデント・タイムズ』に連載されていたエッセー集で、日本語訳もついているし、中高生くらいの英語力で十分読めるような本だ。 私は今まで「大切な考えを簡単な単語のみで書くこ…

世の中全体がかかっている催眠術

SALGADOの写真集『SAHEL THE END OF THE ROAD』を久々に観た。チェーホフの『すぐり』に出てくる言葉が思い出されたので、それのみ引用しておきたい。 実際にこの世には、幸せで満足している人々が何と多いことだろうか!それは何と圧倒するような力だろうか…

「西陣」という名がボツになった理由

最近、英語を勉強していて、翻訳者という存在が大変気になりだしている。谷崎潤一郎、川端康成等の翻訳を手がけたE・G・サイデンステッカーの『谷中、花と墓地』を読んだ。日本語で原稿を発表をする時にはいつも翻訳に回していたというサイデンステッカー…