最初のサイボーグ・デバイス

携帯電話を持ちはじめてから腕時計を新しく購入することがなくなった。たまに、仕事や試験で携帯電話ではなく腕時計しか使用できない場合にだけ、古い腕時計を装着しているが、長瀬唯の『腕時計の誕生』を読んで、久々に気に入る腕時計を購入したい気になった。ジャック・アタリ『時間の歴史』においてサイバーパンク前夜、腕時計こそが最初のサイボーグ・デバイスだと明言しているという。サイボーグ・マシンの原点としての腕時計の誕生(1880年代)から携帯電話が普及するまでのおよそ100年余りの歴史を辿ることのできるこの本には資料としての写真も多数掲載されており、歴史的に著名な人物の腕時計写真が非常に面白かったのだが、今後、昔の写真(特に第二次世界大戦以前の写真)をみるとき、腕時計をしている人をサイボーグ化の尖兵となった「新しい人間たち」としてもみることができるようになったのが嬉しい。