祖母への葉書

青森新町の戦前の絵葉書を手に入れた。古本屋では昔の絵葉書、地図なども取り扱っているところが多く、古書市でも本ではなくこれらのみを目当てに来る客もいるのだけれど、私にとってこのような紙ものコーナーは、一枚一枚絵柄を確認していたら時間がいくらあっても足りなくなるし、素敵なものは一枚1000円以上するものがほとんどなので、はまりだすとお金も散財してしまいそう、と敢えてみないようにしていた感さえある。しかし今回はこのコーナーをふっと覗いてみる気になったのだ。
祖母は青森の新町という土地に住んでおり、私も小さい頃住んでいた時期があるようだ。絵葉書といえば観光名所の絵葉書がほとんどだけれど、新町は駅前の繁華街ではあっても観光地ではないので、そこがまさか絵葉書になっていたとは驚いた。観光地ではないだけにレアな気がして、即みつけた二枚とも購入を決意した。青森は空襲に遭っているのでこの戦前の彩色写真をみてもどこがどこやらわからないけれど、私も知っている今は無き松木屋デパートの看板をみつけた。それから、洋食屋の看板、アールデコ調(?)のモダンな建物や、昔の電信柱、街灯、車に自転車、洋装の人と和装の人、犬に少年などこの二枚の絵葉書には私の好きな時代の風俗がたくさん盛り込まれている。素敵だと思える街並みなので、モダンということで観光地でもないのに絵葉書化されたのかもしれない。

これで祖母に便りを書くことに決めた。大好きな祖母はもう最近のことはあまり記憶してくれないようになったけれど、昔のことはしっかり覚えていて話してくれる。もともと話すのが得意な祖母だったので、昔のことを活き活きと話してくれる姿をみたいがために、私は昔祖母が好きだった曲の音源や絵を集めたり、一緒に昔の写真をみたり、昔のことについて聞いたりしている。祖母の少女時代の街並みを描いたと思われるこの絵葉書をみて祖母は何を思い出してくれるのだろうか。何度も繰り返されるエピソードも多いけれど、新しい素材によってきっと新しいエピソードを話してくれえるに違いないと、わくわくしている。本当は、すぐに会いに行って一緒に見たいところだけれど、ポストカードはもともと便りを出すためにあるのものだし、絵葉書のほうに先に飛んでもらうことにした。

大喜びしているのは私だけで、当の祖母はそんなに感動してくれないかもしれないのだが…