Writing Can Be Democratic

ダグラス・ラミス『最後のタヌキ−英語で考え、日本語で考える』は、『スチューデント・タイムズ』に連載されていたエッセー集で、日本語訳もついているし、中高生くらいの英語力で十分読めるような本だ。
私は今まで「大切な考えを簡単な単語のみで書くことは出来ない」と信じ込んでいたのだが、まさに目から鱗が落ちた。やさしい単語のみを使ったわずか300語程度の短いエッセーのそれぞれが深く心に響き、彼の言いたいことがきちんと伝わってきたからだ。あとがきにはラミス氏が言おうと意図したこと四つが書かれてあり、それはこの本の中でも特に素晴らしい文章だったので、もし、この本を読もうか悩んでいる人がいたら是非あとがきだけでも読んでみて欲しい。ラミス氏が伝えたかった四つのこととは、1.Writing Can Be Democratic(文章は民主的に書くことができる) 2.It's OK to Be Radical(ラディカルになってもかまわない) 3."My-Country-Is-Better-Than-Your-Country" Is a Stupid Game(「私の国はあなたの国より優れている」というのは馬鹿げた論法である) 4.The World Is a Wonderstorm(世界は驚異の嵐である)ということだ。1については、「内容の水準を落とさずに簡単なことばで書かれた文章=民主的な文章である」、「民主的な文章を書くためには練習や独創的な考え、勇気が必要である」「民主的な文章は一般の文章よりもっと読者を考えさせる力を持っている」「長い論文は必ずしも、もとの文章を優れたものにするということではない」というような意味を含むのだが、このことを身をもって実感できるこれ以上優れた本はないのではないかと思う。家庭教師をしていたとき、教え子にプレゼント出来ていたらよかったなぁ、と後悔。

最後のタヌキ (晶文社セレクション)

最後のタヌキ (晶文社セレクション)