リンゲルナッツという詩人

池内紀『ぼくのドイツ文学講義』を読んで、リンゲツナッツ(たつのおとしごという意味らしい)という詩人のことを知った。池内さんが、まえがきで「大好きなリンゲルナッツとその訳者について、書くことができたのはうれしかった」と書いているだけあり、池内さんによって紹介されたリンゲルナッツはまことに魅力溢れる人物だ。

男性の郵便切手が、はりつくまえに
素晴らしいことを体験した
彼はお姫様になめられた
そこで彼には恋が目覚めた
彼は接吻を返そうとしたが
そのとき旅立たねばならなかった
かくて甲斐なき恋であった
これは人生の悲劇である
(ヨアヒム・リンゲルナッツ『郵便切手』板倉鞆音(訳))

ほのぼのとしていてユーモア溢れる詩はもちろんのこと、絵も上手い。人生も面白い。

私は、江戸川乱歩みたいにいろんな職業を経験した人に、つい親近感を持ってしまう。(私はいろんな職業を経験したいと思っており、実際今までそうしてきたので。)

リンゲルナッツの場合、水夫見習い→二等水夫→海軍の水平→店員→新聞売り→観光案内人→セールスマン→書記→保険代理人→煙草屋→司書→ドイツ海軍少尉→掃海艦艇長・・・園芸学校に入学し植木屋になろうと思ったりもしたらしい。それから、キャバレーの芸人にまでなっている。ギターを奏いて、自分の詩を唄にしていたようだ。ヘマで、ドジで、要領が悪く、やることなすこと間が抜けている、とも書かれているが、キャバレーの芸人まで出来るとは、大した才能だ。

面白い人を紹介してもらった。早速、彼の本を探さなくては。

ぼくのドイツ文学講義 (岩波新書)

ぼくのドイツ文学講義 (岩波新書)