ゲームブックの思い出
ファミコンが売り出されたのは1983年だ。私が小学生だった頃は、ほとんどの子がファミコンを持っていた。私は、ファミコンを持っていなかったので、友達の家に行ってファミコンをやらせてもらうのがとても楽しかったことを覚えている。せっかく友達の家に行ったのに、ひとりでも出来るゲームが楽しかったなんて悲しい感じもするけれど、あの頃、室内での友達との遊び方としてゲームというのは既に一般的だったような気がする。
ファミコンを持っていなかった私は、ファミコンの代わりに自分のお小遣いでも買うことが出来るゲームブックに目をつけた。
ということを思い出したのは、『神話製作機械論』という本の中で、私が持っていたゲームブック『シャーロック・ホームズ10の怪事件』について書かれた文章があったからだ。このゲームブックには、地図、住所録、“タイムズ”などが付属されており、小学生には少々難しくもあったけれど、ファミコンに負けないくらい面白かったことを覚えている。
『神話製作機械論』によると、85年の後半にゲームブック・ブームが訪れたようだ。大型書店にゲーム・ブック専門のコーナーがあり、30社ほどの出版社がゲームブックを手がけていたというから驚く。ファミコン発売後のブーム到来だ。私は、ファミコンがないからゲームブックを読んだのだけれど、ファミコンがあればゲームブックを読んだりしなかったと思う。(読むという言葉が適切なのか、遊ぶという言葉が適切なのか)ゲームブックはファミコンの代わりという性質のものではなかったのだろうか、と思う。
今やあまりにコンピュータゲームが発達しすぎて、わざわざゲームブックを読もうとする人なんて、余程の物好きのように思える。少数のゲームブックマニアが、消滅しかけているゲームブックを古本屋で買い占めているのかもしれない。
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