旬の愉しみ

『M嬢物語―鴨居洋子人形帖』を読む。彼女が作った数々の人形の写真が華やかなエッセイ本だ。鴨居洋子は下着デザイナーだけに、人形の下着も丁寧にデザインされ、どの子の下着もそれぞれ違って素敵。

人形エッセイを読むと、自分と人形との関係も思い出す。3歳のころ母がフランスから買い求めてくれたマリアちゃんが私の親友だった。母にはまた母の幼いころの親友、アメリカ人形のメリーちゃんがいて、私よりもはるかに年上。マリアちゃんもメリーちゃんも豪華なドレスやお道具をたくさん持っていた。私は器量がよくてドレスの似合うマリアちゃんになりたかった。娘が生まれた今、やはり娘にとって特別な存在になり得るような人形をプレゼントしたいと思う。

人形はいつでも話を聞いてくれ、ごっこ遊びのお相手をしてくれる。人形を中心に小さな世界を作ることができる。人形遊びの愉しみのひとつに服を着せ替えることがあるけれど、娘が出来て、親のエゴという後ろめたさを少し感じつつも、その愉しさを思い出してしまった。

セーラーカラーの水兵さんのような服を着せると、水兵帽も作ってかぶせてみたくなる。段ボールなどでお船を作りのせてみたくもなる。お人形も赤ちゃんも小さいから、必要なものを気軽に手作りできてしまう。大人になった自分向けに作るより自由度が高い。お人形遊びをしていたころ、もっとお人形の服や道具を作り、手芸や木工の技も身につけておいたらよかったな、と思いつつ、苦手な手先を使う仕事を少しずつしている。子供の好みが出てきたり、大きくなると出来なくなる旬の愉しみだ。

M嬢物語―鴨居羊子人形帖

M嬢物語―鴨居羊子人形帖