For your first AOMORI−第一話−ねぶた篇

今年も大好きなねぶた祭に行くことが出来なかった。残念なのでねぶたの本を読んだ。
安政地震から150年、阪神淡路大震災から10年にあたる2005年には「地震鯰」というねぶたが造られたというが、東北新幹線が青森に開通して最初のねぶた祭となる今年、新幹線が開通した矢先の東日本大震災だった。今年のねぶたはどんな様子だったのだろうか。

河合清子著ねぶた祭−”ねぶたバカ”たちの祭典』には、ねぶたを制作するねぶた師がどのような工程でねぶたを完成させるかが詳細に書かれており、ただただ、美しさや迫力に圧倒されてねぶたを見てきた私のねぶたを見る目が少し変わった。著者は、青森出身の方ではないが、ねぶた祭の取材を10年来続けてきたということで、こよなくねぶたを愛している。その愛情が伝わってくる本であった。

青森に長年住んでいた私がねぶた祭で特に好きなのは囃子だ。演奏技術はもちろん、フォームから表情から半纏から何から何まで囃子方は最高にカッコいい。ねぶた囃子の笛の練習を機会があればしたいと思っているのだが、関西では練習の場がない。青森に住んでいさえすれば気軽に練習できるものと思っていたが、この本により、どうやらそれはとても難しそうだということがわかった。短期集中型練習さえ、入会希望者がスポンサーの社員でない場合は会員二人の推薦が必要という狭き門である。練習は年間を通して半端ではない量行われているようで、ねぶたを愛してはいるが、そこまでの意気込みが無い私なぞはたぶんお呼びじゃないだろう。地味に関西のカラオケボックスで一人練習するしかなさそうだ。

ねぶたの魅力は第一に誰もが参加できるということだ。ねぶたという祭は、寺社が司る祭ではなく、自然発生的に行われるようになった祭なので、参加者が神社の氏子や寺の檀家であったりする必要がないということが理由である。観光客も2500〜4000円ほどでレンタルできる(購入するとしても4000円〜)衣装さえ着ければ参加することができるという排他性の無さが好きだ。もちろん女人禁制でもない。踊りも阿波踊りのように難しくはなく、単純。跳ねることさえ出来たらよい。

自前の衣装に結構お金はかかるが、仮装好きならバケトとして参加することも出来る。仮装し、単体で歩くバケトは、絶えず皆の注目を集めるので、パフォーマンスもさまざま準備する必要があり、芸人修行にもってこいだ。このバケトは明治頃の写真にも写っているそうで、戦前は、ハネトよりバケトのほうが数が多いほどだったとか。青森市民の実はユニークでおおらかな一面が窺える。

ねぶた祭は見ているだけでも面白いが、祭に参加するということの魅力を知ることが出来る祭のひとつだ。(ちなみに私は昨年郡上踊りに参加したが、誰でも参加出来、音が魅力、踊りも比較的簡単という共通項を見出すことが出来、郡上踊りもとても好きになった)

こんな本をガイドに来年のねぶた祭を見に行ってみてはいかがでしょうか?と、新幹線開通から半年以上経過してしまったけれど、JR東日本のCM風なタイトルで青森のPRをしてみました。