『「まだ結婚しないの?」に答える理論武装』読了メモ

伊田広行『「まだ結婚しないの?」に答える理論武装を読んだ。「まだ結婚しないの?」は、たいていの独身女性が(個人差はあるだろうけれど)学校を卒業したあたりから年齢が高くなるにつれて頻度を増し言われ続けることになるプレッシャーを感じさせる言葉だ。「まだ結婚しないの?」と言う側は、軽い気持ちで、もしかしたら善意のつもりで言っているのかもしれない。でもこの台詞はシングルでいることへの世間の偏見を象徴するような考えなしの言葉だ。
この本には「まだ結婚しないの?」に端を発する様々な台詞(例えば「難しく考えずに、結婚は勢いでするもんだよ」「結婚したら、制度的な面でお得だよ」「出産にはタイムリミットがあるから、早く結婚しないと」等)が列挙されており、それに対する考察と言い返し方の様々なパターンが書かれてある。そこには実にまともなことが書かれてあり、私自身独身のまま30を過ぎた今まで言われ続けてきたことに対して自分なりに考えてきたことと一致する考え方だった。(ちなみに、この本に例として挙げられている台詞のほぼすべて言われた経験がある)おそらく、「まだ結婚しないの?」という言葉をかけられ、嫌な思いをしてきた人は、この本に書かれているような理論武装は自分を守るために既にしてきていると思う。少なくとも私がこの本を読もうと思ったきっかけは、理論武装をしたくてというわけではなく、自分がまともな考えをもっているということを確認したいという想いからだった。果たして目的は達せられた。
私自身の経験では、「まだ結婚しないの?」と言われる時、言う側は軽い気持ちで言っているのだから、真面目に理論武装しても効果はなかった。理論で返すと、それはその通りだと納得する人が大半だったようにも思う。問題は、いくら理論で返しても、言った側がそういう発言をしてしまった自分自身を恥じるだけの感性を持ち合わせない鈍感な人間であるということだった。もちろん、この本を読んで新たな視点を得ることが出来る人もいるだろうけれど、この本は、理論武装したところで意味はないとあきらめに似た感覚を持ってしまった人に、世の中にはまともに考えられる人もいるのだということを思い出させるという効果もある本だと思う。

「まだ結婚しないの?」に答える理論武装 (光文社新書)

「まだ結婚しないの?」に答える理論武装 (光文社新書)