お姫様と私

昨年亡くなった若桑みどり氏の『お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』を読んだ。ジェンダーはどんな学問をしていても到達するだろう問題ではあるけれど、彼女のことは美術史の人とばかり思っていたので、ジェンダーの分野でも幅広く活動していたとは知らなかった。
この本では「シンデレラ」「白雪姫」「眠り姫」のディズニーアニメについて、それらを鑑賞した現代の学生がどのように感じたかが率直に書かれた実際のレポートを引用しながら話が進められる。
久々にお姫様のことを思い出すことができ、楽しかった。自分がかつてお姫様を大好きであったこと、現在も全く嫌いとは言い切れないということ、昔私が好きだった女の子を主人公とした話から、自分は結構悪影響を受けたのかもしれないということ、に気づいた。それでもやはりお姫様は捨てられない存在だと確認したので、好きだったお姫様については、愛憎入り混じる感情をコントロールしながら、今後も大切にしていきたい。

ナチスは自己の思想を宣伝するのにおおいにグリムを利用した。たとえば第二次大戦中に『赤ずきんの狼はユダヤ人であり、赤ずきんはドイツ人、赤ずきんを救い出す猟師は国民を解放するアードルフ・ヒトラーである』」と宣伝した  (石塚正英著『「白雪姫」とフェティッシュ信仰』)

彼(ディズニー)が「白雪姫」を公開した一九三七年とは、第二次世界大戦の火ぶたが切られようとし、日米が開戦する直前だった。エリオットによれば、「映画の基本テーマは、危機にあるアメリカの社会心理に訴えた。白雪姫の恐ろしい継母に対する抵抗は、暗黒の悪の力がアメリカの存在そのものを脅かすかに見える世界大戦にまもなく突入しようとしていた国民の恐怖を反映した」。
つまり、あらゆる悪にうちかって復活する白雪姫は、アメリカの理想の家庭をまもる不朽の「理想的、家庭的女性」であった。それを戦後の日本が家電や自動車などと一緒に喜んで輸入したということである。
若桑みどり著『お姫様とジェンダー―アニメで学ぶ男と女のジェンダー学入門』)

ナチスやディズニーも勝手にいろんな解釈をして童話を利用したけれど、解釈次第で嫌いになることも好きになることも出来る。解釈というより、パロディやリメークになってしまうけれど、自分の中で輝いていたお姫様のことはシンデレラのリメーク映画エバー・アフターのダニエル的なヒロインとして蘇えらせた上で付き合っていきたいと思う。

エバー・アフター [DVD]

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