反復にある粋?

ここのところ、「反復の魅力が少しわかるようになったのかな」と、感じている。昔は、筋を知っていたり想像出来たりするような話には全く興味を持つことができていなかった。知らない世界がありすぎて、例えば時代劇を繰り返し見たりするのはおじいさんおばあさんのすることだと思っていたし、気に入った映画や小説でも注目する場所を変えてみるつもりが無い場合は、あまり繰り返して鑑賞してこなかった。
先日、歌舞伎(「白浪五人男」)と寅さん映画を観たとき、そんなちょっとした変化をはじめて意識した。前者は、筋を知っている話で、後者は、展開を想像できるもの。どちらにも次の展開がわかっているのにわくわくさせられた。型(作法)にはめられたものの美しさ、スマートさ、生真面目さ、その中でも役者の技量によって変化がつけられることの面白さ、安心して観られることの心地よさ。刺激が少ないことによる心地よさっていうものは、昔、嫌悪さえしていたものだったのだけれど、私も年をとったんだな、と、良い意味で思った。それに、ある意味この刺激の無さが私にとっても刺激になっている部分がある。
寅さんのジャケットの生地は実は女物で裏地は錦絵である。実はとても粋。一見地味にみえるものの中にある粋に、気づかないことは実に多い。無粋な私は、まだまだしばらく落ち着くことは出来ないと思うけれど。
歌舞伎の記憶が残っているうちにと、市川雷蔵主演の『弁天小僧』も観た。やっぱり知っている台詞が出て来ると自分も言いそうになるほど盛り上がる。映画だから歌舞伎とは当然違うのだけれど、歌舞伎らしい演出を発見しては良い気分になる。果ては弁天小僧と寅さんの共通点を数えあげてまで十二分に楽しんだ。似たようなものばかり好むとはなんて好奇心が足りないのだろう、と昔の私が思っていたおじいさんやおばあさんは、実はこんな風に楽しんでいたのかも!実は粋なことをしていたのかも!!微妙な差異を楽しめることの技術を持った人ならではの行為だったのかも!この勢いでおやじギャグ等の面白さもわかるようになれたら儲けものだ。

弁天小僧 [DVD]

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