学生時代の自分に教えてあげたかった本

ヴァルター・ベンヤミン『教育としての遊び』を古本屋でみつけ、300円という破格の値だったので二冊目になるけれど入手した。ベンヤミンが「はじめて満足のゆく文章」と呼んだという《経験》という文章や《学生の生活》という文章が収められており、これらは特に好きな文章なので、もう一度読んだ。どちらもベンヤミンが学生時代に書き、おそらく読者も学生を想定していると思われるものなのだけれど、今の私の年齢になって読んでもやはり素敵な文章だと思う。大人に対する不信、社会人になることへの不安で悩む者に希望を与え勇気付けるような文章だ。特に教育者を志していたり自分の子供を持っていない人でも問題なく読める本なので、『教育としての遊び』というタイトルでなければ、より手に取る人が多くなるかもしれないのに、と思う。私はこの文章を本当に必要としていたであろう学生時代にではなく、卒業後に読んでしまったのだけれど、はじめて《経験》を読んだ時は、「大学時代の自分に教えてあげたかった」と心底思った。

教育としての遊び

教育としての遊び