ベロックの映画

観てしまうのがもったいないと思っている映画や、読んでしまうのがもったいないと思っている小説や漫画があるのだが、その中のひとつであったルイ・マル監督『プリティー・ベビー』をついに観た。1910年代のニューオーリンズの娼館が舞台で、それだけでも当時の娼館がどんな感じであったかわかって興味深い映画なのだが、私が今まであたためていた理由は、美少女の誉れ高いブルックシールズの代表作だからだ。
娼館で母と暮らす12歳の少女がブルック・シールズの役どころ。娼婦の写真を撮らせて欲しいと写真家が娼館を訪れることからストーリーは展開する。
写真家が登場したところで、すぐに映画の設定と同じ1910年代にニューオーリンズの娼婦を撮っていた写真家、E・J・ベロックのことを思い出したが、実際映画に登場した写真家の名前もベロックだったので、実話に基づいた話なのだということがわかった。ベロックが赤線地帯で撮りためた写真は、長く誰にも知られることがなかったようだけれど、1970年代にリー・フリードランダーによって発見されることになったと本で読んだことがある。ベロックの写真は、写真家と娼婦の信頼関係を感じさせ、娼婦が非常に美しく撮られていたため、すぐに思い出せるほど私の記憶に鮮明に残っていたのだけれど、まさかベロックをモデルにした映画が『プリティー・ベビー』だったとは!
まだ12歳の少女が商品として値をつけられ、水揚げされるシーンもあり、少女売春というテーマは決して明るいものではないのだけれど、主人公の少女の無垢(無知?)ゆえの強さや、明るさ、残酷さが印象に残る映画だった。日本の花街を舞台にした映画にありがちなじめじめと遣る瀬無い感じはそんなにしないので、観ていて疲れるような映画ではない。多分、お国柄の違いというよりは、ブルック・シールズが演ずる少女が、もともと娼館で生まれ育っており、その世界しか知らず、貧しい普通の家庭から売られてきたりしたのではないからそんな印象を受けたのだろう。ブルック・シールズの美しさは、やはり一見の価値あり。

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