クーロンズゲート

かつてプレイしたことのあるゲームの中で一番好きなのはと聞かれたら『大航海時代』と答えるだろうけれど、この先もう一度プレイしたいと思うゲームは?と聞かれたら『大航海時代』より『ドラゴンクエスト』よりクーロンズゲートと答えると思う。実際私はクーロンズゲートの迷宮から脱出出来ないままエンディングを未だ見ていない。

九龍城砦とはいったい何だったのか。『魔窟』『東洋のカスバ』『犯罪の巣窟』・・・荒俣宏言うところの(地上に残された最後の清朝領土として、中国にとってもイギリスにとっても、無法という意味からする)「治外法権スラム」だ。多いときで、約4万もの人々がこの城砦で暮らしていたという。香港で活動しづらいもぐりの業者が1950年代頃からここへ逃げ込み、店を出しはじめたという。

私はこの九龍城砦のことをよく知らないままにゲームをプレイした5年ほど前になるが、モデルとなった九龍城砦を、この度写真集で確認する機会を得た。暗く狭い路地や石段、むき出しの水道管、そこに突如として出現する気だるい老若男女、ギィーっという鈍い音が聞こえてきそうな鉄の扉、入れ歯の模型、扇風機、テレビアンテナ、鎖、プリントはモノクロだけど色のついた光を感じさせる蛍光灯、中華料理店に食料品店、漢字を日常的に使用する私にとってすらエキゾチックにみえる漢字の看板・看板・看板・・・かつて私がバーチャルで体験した空間が、この九龍城砦を忠実に再現したものだったのだということがよくわかった。

1992年にこの九龍城砦は取り壊されることになる。現在は、近代的な公園として整備されているそうだ。しかし、世界のいたるところに、またしても壁が築き始められ、人々が押し込められているということは減少するどころか増えてきている。都市とは常に変化するものだが、そこに人種と呼ばれるものや経済格差によって不気味な境界が見え始めたことに不安を覚える。

九龍城砦は確かに失われたものではあるけれど、そのイメージは、おそらく、リドリー・スコット監督ブレードランナー押井守監督『Innnocence』の映画中で使われているようなデストピアとして今後も、様々な作品の中に取り込まれ、更なる変化を遂げていくような気がするのだが、この写真集がもつ自由のもつ原痕跡のようなイメージはどのように語りなおされていくのだろう。未解決の隠喩としての公園となるのだろうか。

九龍城砦

九龍城砦

クーロンズ・ゲート

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