家庭の医学

1時間ちょっとで読むことができる薄い本だ。「家庭の医学」という事典風の題に似合いの目次で、【貧血】とか【嘔吐】などと名づけられているのが面白そうだな、と読んでみた。語り手の母親の死について、病気になって死ぬまでの過程が描写も生々しく綴られている。読み終えて、小説になるように特別なことは何もない話だったな、と思った。誰もが似たようなかたちで身内の死を経験するだろうと。病状の描写は詳細で、生々しく感じられ、読んでいて苦しくなる部分もあった。それなのに、決して気持ち悪くはなく、むしろ美しく感じられる。特別な話でもなく病気を美化することもなかったのだけれど、これは、映像で表現したらこうも美しい印象を受け手に与えることは出来ないだろうと思った。

家庭の医学

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