アップルパイ
今日、アップルパイを買った。アップルパイをみると、尾崎翠の『アップルパイの午後』という戯曲形式の小品を思い出してしまい、ついつい買いたくなってしまう。この題名、なんて素敵なんだろう。そして、もちろん、内容も。兄と妹と友達と、登場人物は三人。テンポよく話は展開し、笑わせられる箇所もたくさん盛り込まれている。兄と妹が出てきて、ロマンチックで、コメディで、少女漫画を読んでいる気にもなる。台詞がとにかく面白くて、有志を募って演じてみたくなる。(私は、もちろん、妹役をやりたい。)
「あの時、私がちよつときまり悪るがつたために、もうアツプルパイにも逢へないかと思つて、私悲しいんですの」
それに、今のアツプルパイで思ひだしたけど、松村もお前と同じアツプルパイが好きなんだ、濃いお茶で。
(尾崎翠『アップルパイの午後』)
アップルパイは、濃いお茶で、という考えにはまったく賛同する。アップルパイのリンゴで甘くなった口を濃いお茶でさっぱりさせて、またさくっとパイをかじり、中から出てきた甘いリンゴでとろんとなる。そして濃いお茶を飲んで目を覚ます、の繰り返し。薄いお茶では、とろけたままで食べ進むことができないから。
- 作者: 尾崎翠
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1991/11
- メディア: 文庫
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