思い出はうたと共に

石井好子さんの自伝的エッセイ集「思い出はうたと共に」を読んだ。石井好子さんの歌声が好きで、CDはほとんど持っている。DVDも購入し、映像でも石井好子さんをみて、そのおおらかで明るい雰囲気がますます好きになった。

「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」などにも、魅力的なエピソードがふんだんに盛り込まれているけれど、この本は、パリ時代だけではなく、有名なシャンソンの詩などを引用しながらの、小さい頃から戦時中の話、パリ留学を終えて日本に帰ってからの話をも含む。シャンソンがそうであるように、ただ楽しく読めるようなエピソードだけではなく、人生というものを考えさせられ、心に染み入る感じのエピソードが多かった。

石井さんは、仕事柄とは言っても人脈の大変豊富な方で、このエッセイにもたくさんの有名人が登場する。そして、彼らの素顔が石井さんの目を通して伝わってくるのも面白い。
なかでも、ジョセフィン・ベーカーのエピソードが詳しく書かれていて、印象深かった。

帰国時、マルセイユから日本の半貨物船に乗って横浜まで40日間の船旅をした時、同乗の大学教授と手作りの百人一首を記憶を頼りに作り、完璧な百人一首を作ったというエピソードも、かっこいいな、と思った。