子供の十字軍
『子供の十字軍』という本を手にとり、「確か、少年十字軍ってあったよな・・・あれ、それとは違うのかな」などと思いながら読み始めた。
1941年にベルベルト・ブレヒトが書いた詩である。山村昌明の銅版画とともに、たった一篇の詩ではあるがきちんとした一冊の本として、十分に読み応えのあるものであった。
子供がつぎからつぎへと行列に加わっていく様子からは、異常な事態を想像させられ、恐ろしい。悲劇的な史実がもととなっているとされる「ハーメルンの笛吹き男」を連想してしまう。この「子供の十字軍」も1939年のドイツ軍によるポーランド侵攻という悲劇的な史実を素材としたものだ。
この詩によりイメージされる子供だけの行列は、現実にあるかもしれないものとしては想像しにくく、ずっと幻想的なイメージで読み進んでいたが、最後の部分では、やはりこれは現実にありえることだとハッとさせられた。戦争の犠牲となる子供を題材にした作品は山ほどあるけれど、それは終始リアルに描かれることが多い。でも、この詩は、美しいとさえ感じられる幻想的なイメージではじまるだけに、また、最後の部分まできても、「あれ、どういうことだろう」と思い、ちょっとその恐ろしさに気付くのに時間がかかるかもしれないだけに、インパクトがある。
少年十字軍について、調べなおしてみたけれど、第4回十字軍後(13世紀)、少年・少女が中心となり結成された民間十字軍のことであった。そうだ、やはり世界史で勉強していた。マルセル・シュオッブの同名作品もあり、これは、王国社から多田智満子訳で出ているらしい。
訳といえば、この『子供の十字軍』は、矢川澄子訳、で、矢川澄子訳の『タイコたたきの夢』も、行列が増える話。これも、なかなか考えさせられる寓話だ。
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