ジュニア向けの本

30歳も間近だけれど、岩波ジュニア新書『砂糖の世界史』を読んだ。著者は『路地裏の大英帝国』『洒落者たちのイギリス史』等を書いた川北稔だ。岩波ジュニア新書であっても、気になる人が書いているとつい買ってしまう。ちくまプリマーブックスも10代向けに書かれてある本だけれども、例えばウルトラマンのできるまで』とか『怪物の王国』とか興味深い内容のものもあって、あまり対象年齢は気にせず買う。小学校低学年向けの童話でも絵本でも良いものは対象年齢にこだわらず読んでいきたいな、と思う。

子供向けに書かれてある本は、「○○なのです」とか「きみたちは○○ではないだろうか」等、話しかけるような、時には諭すような文体で書かれている場合が多く、そのあたりに大人として少し違和を感じることはあるけれども、その点を除けば、内容の充実度からいって大人向けの新書とそんなに変わらないような気がする。

小・中学時代、この岩波ジュニア新書を薦められることが多かったけれど、持っていただけで読んだという記憶がない。こういう本を読む小・中学生というのは、いまひとつイメージできない。一部秀才は、子供向けの中途半端なジュニア新書的なものではなく本格的な大人向けの本を読んでいるだろうし、それ以外の子供にはこういう本はちょっと堅苦しくみえるのではないだろうかと考えてしまうからだと思う。岩波ジュニア新書的なものは、大人が子供に買い与えて安心するためのものか、私みたいに、何かについて簡単に知りたいと思っている怠惰な大人のためにあるような気もする。

砂糖という「世界商品」を通して、下層の民衆の生活がみえるということ、世界的なつながりがひと目でわかるということを若い人につたえるために、この本では、単に世界史で用語として習う「砂糖革命」がどのようなものであったかについて詳しく説明されてあるにとどまらない。ヨーロッパのいろいろな階層の人びとがどういうつもりで砂糖を消費したのかまで詳しく説明されたこの本には、「デコレーション」の素材としての砂糖の用法が重要であったことや、バラの花の砂糖漬けが解熱剤としてビザンティン帝国や西ヨーロッパで重宝されていたこと、「バブル」という言葉の由来が1720年の「南海泡沫事件」だったということ等、私の知らなかった情報も数多く含まれていて、飽きずに読むことが出来た。

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)