のらくら者たち
フェリーニの『I Vitelloni 青春群像』を観た。30歳近くになってもぶらぶらしている5人の男(と彼らをとりまく人々)の物語である。1953年作品で、フェリーニの実質的なデビュー作ともされる作品のようだ。冒頭部分では、派手好きのフェリーニも、初期はこんな感じだったのか、と思ったりしながらみていたけれど、話も半分くらい進んだカーニバルの場面あたりから、どんどんフェリーニらしさを感じた。小説でも、作家の個性は処女作に一番よく表れるといわれたりするけれど、その監督らしさというのも初期作品に既にきちんと表れているものだな、と思う。
この映画は、マーティン・スコセッシ監督の『私のイタリア映画旅行』で紹介されており、それを観て以来ずっと観たいと思っていたのだけれど、30歳近い男たちに『青春群像』というタイトルが果たしてふさわしいのだろうかと疑問に思っていた。(私自身は、大学を卒業したあたりで自分の青春は終わったと思っていたから。原題は、「のらくら者たち」という意味らしい。)辞書で「青春」を調べると「夢や希望に満ちた活力にみなぎる若い時代」などと書いてあったけれど、この映画の5人が夢や希望に満ち溢れているか、というと微妙なところだ。のん気(…一般的にダメ)なところは大人の感じが全くしないから、30歳近くても、ある意味若いといえるのか(?)
年齢が近いこととのらくらしているという2点で、最初から主人公に自分を投影させようとして観たこの映画。メインの5人それぞれに個性はあるけれど、一般的にダメと言われるような若者ばかりだ。1950年代、戦後の若者はしっかりしていたイメージがあるけれど、昔も今もそんなに変わらないのかもしれないな、と思った。でもやはり、あの感じは戦後の若者に特徴的だったもので、今の若者とはまったく質の違う「のらくら」なのだろうか。
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