少女の日記

矢川澄子アナイス・ニンの少女時代』を読んだ。アナイス・ニンは、ヘンリー・ミラーの恋人だったり、アントナン・アルトオを夢中にさせた美女ということで興味を持ち、『近親相姦の家』『小鳥たち』を買って持ってはいたのだけれど、結局読まないうちにどこかにやってしまった。

作品が好きになるとその作家にも興味を持ってしまうし、その逆もまたあるというのは多くの人に共通すると思うけれど、作家と作品を切り離して考えられない人の割合は一体どのくらいなのだろうか。私は、その作家の人となりがあまり好きになれないと、その作品にまであまり興味がなくなるのだけれど、私の友人・知人には、「作品と作家を切り離して考えることの出来ないのはおかしい」「良い作品は嫌なヤツに書かれていても良いのだ」という意見の人が圧倒的に多い。でも、その作家の人となりも、その作家の作品と言えるわけで、関連付けてしまうのはそんなにおかしなことではない、と思う。人となりというのは、個人の主観で好きか嫌いか判断されるし、作品も良いも悪いもその人の好みで判断される。私の場合、その作品が好きな作家は好きになれることが多く、その作家が好きな作品も好きになる場合が多い。作品が好きであったのに、作家が人として全く好きになれない、ということはそんなにないけれど、たまにあると、騙された気になる。言っていることとやっていることが違う人という感じがする。

話がそれたけれど、私は、アナイス・ニンを作品からではなく、人から知ることになった。アナイス・ニンは11歳のときから74歳で亡くなるまでずっと日記を書き続けていた。『アナイス・ニンの少女時代』では、アナイスがスペインからニューヨークに渡ることになった11歳からヒューゴー・ガイラーと結婚する20歳まで、どんな少女時代を過ごしたのか、彼女の人格がどのように形成されていったのかが詳しく説明されている。

少女と日記で思い出すのは、ほかでもなくアンネの日記。聡明な少女の日記というものは、下手な少女小説顔負けの瑞々しさや気高さに溢れていて、この本は、日記の引用部分も結構多いのだけれど、読後なんだか浄化されたような気分だった。アナイスの少女時代の写真は残っているのだろうか。1903年生まれだと残っていない可能性のほうが高いけれど残っていたら是非みてみたい、と思う。

アナイス・ニンの少女時代

アナイス・ニンの少女時代