障害者の就労

障害者の就労を支援するため、厚生労働省が来年度(2008年度)からハローワークに専任職員を配置するという記事が新聞に掲載されていた。これら就労支援コーディネーター(仮称)には企業の人事経験者らが数百人配置されるようだ。

私は福祉系の職場にいたことがあるのだけれど、その時、障害者が雇用されることがいかに困難かということを肌で感じた。例えば、障害者向けの就職フェアに参加したときのこと。全体的に参加企業の件数が少ない*1のに加えて、最初から正社員として障害者を起用しようとしている会社は5社にも満たず、ほとんどが低賃金の非正規職員の求人であり、それも、車椅子不可等の制限が設けられていたり、週に2〜3日と就労時間が短い仕事であったりと、せっかく遠いところから足を運んだ求職者が失望するような内容の就職フェアだった。就労時間が短いことについて「少しずつ職場に慣れてもらって徐々に時間を増やします」というところもあったけれど、実際職場に不適応と会社に判断されたらどうなるのだろうか。他にも、企業に支払われている奨励金はきちんと採用された人に還元されているのだろうか等、いろいろ疑い考えだしたらキリがなくなり、こういうとき、法をきちんと知っていたら、と思う。特に労働法は、きちんと勉強しておきたい。

相談員という仕事柄、障害を持っている人の話をきくこともあり、就労を希望している人にはハローワークの障害者就労支援窓口を紹介するようにと先輩から言われてはいたけれど、正直、ハローワークの障害者就労支援窓口は自信をもって紹介できる場所ではなかった。実際、持っている求人はほとんど無いようだし、きちんと対応してもらえなかったという理由で私のところに相談に来る人もたくさんいたからだ。障害者就労支援窓口担当者の方も頑張っているのかもしれないけれど、いわゆるお役所的な通り一遍の対応で済ませてしまっているところがあるのだとしたら、障害者と一口に言ってもその人によって程度は様々だし、ひとりひとりに適切な対応を出来るよう、また就職フェアを開催するなら、質(参加企業の求人内容)も充実させることに力を注いで欲しい。ただ、「障害者に理解がある」という会社のイメージ戦略として障害を持った人が利用されるだけではないのか見きわめたり、就職してからのフォロー等もきちんと考えて仕事をして欲しい。

例えば、障害者が働く場として授産施設があるではないか、と考えている人もいると思うけれど、実際授産施設で月〜金の平日、朝から晩まで毎日働いて得られるお金はどのくらいかというと平均月額1万円前後で、1万円にも満たないところはたくさんある。障害基礎年金と合わせても年収100万に満たない収入では最低限度の生活は厳しいはずだ。生活保護の受給資格があるのにかかわらず、相談窓口で追い返される人の事例が後を絶たないけれど、この障害者の就労に関する問題だって人の生死にかかわる。

というわけで、今回の新聞記事にも、「障害者の雇用拡大につながったらいいな」と期待を持つ一方で、企業の人事経験者*2を数百人起用することで、また無駄にお金を使って肝心の障害者のためにならないかもしれない、と不安を抱かずにもいられない。

その記事によると、障害者の就職件数は5年連続で増えているらしいけれど、希望者数に対する就職成立件数の割合は5割に満たない。また、数は確かにあげられているけれど、職場定着率のほうは実際低いようだ。

*1:私の行ったフェアでは30件ほどだった

*2:定年後の人も含まれるのか?にしてもボランティアとして雇われるわけではないだろう。当然高い給料が必要となってくるのだろう。