Le Rayon vert

エリック・ロメール監督の緑の光線を観た。彼の「喜劇と格言劇集」第四作である。エリック・ロメールは他の作品を何作か観て好きになった監督だけれど、この映画の前半部は観るのを苦痛に感じすぎて途中で観るのを止めようかと思ったほどだった。気持ちの悪い映像が出てきたり、難解だったりと、そういう類の苦痛ではなく、主人公の孤独や寂しさがこちらに伝わりすぎた故の苦痛だったのだと思う。この映画は、恋人と別れて後なかなか男性を信用できない、理想が高く潔癖な女性のバカンスを描いた映画で、彼女の孤独を主題としている。エリック・ロメールは、ほとんど音楽を使わない監督のようだけれど、今回は珍しく音楽が使われており、その音楽も不安定な気持ちを増加させるような音楽だった。そのうち、主人公がすぐに泣きだすところがすごく嫌に思えてきて、「しっかりしてよ」「バカじゃない」などと主人公に憤慨し、自分と似たところのある主人公を観察しながら、こういう風に潔癖さを出すと感じ悪いなぁ、とか、こういうところは改めていこうだとか、自分自身について反省しながら観ていた。恋愛至上主義の国っぽいフランスのようなところでは「ひとりじゃダメだ」とおせっかいなことをたくさん言われそうで鬱陶しそうだ、とか、バカンスというものを羨ましく思っていたけれど、バカンスがあればあったなりに過ごし方を詮索されたりしてプレッシャーに感じる人もいるのだろうな、というようなことも考えたりしながら、結局は主人公の次の日が気になり観続けることとなった。

老婦人達がジューヌ・ヴェルヌの小説緑の光線について話し合っている場面あたりから面白くなってきた。「緑の光線」を見た者は、自分や他人の心が読めると言われているらしい。老紳士の科学的説明も興味深かった。

海辺でスウェーデン人の旅行者と出会うシーンや、駅のシーンでは、自分のした一人旅とその時のいろんな人との出会いを思い出し懐かしむことも出来た。

理想の恋人になかなか出会えないと思っている独身者(男女問わず)にこの映画をおすすめしたい。

水平線の向こうに太陽が沈んだ時に見えるかもしれない「緑の光線」、私も見てみたい。もし、ブログをはじめる前に、この映画を観ていたら、ブログタイトルを「Le Rayon vert」としていたかもしれないほどに、この話が気に入った。