L' ART DE LA DISPARITION

写真論は好きでよく読むのだけれど、「これからはもうしばらく読まなくても良いかな」とちょっとだけ思ってしまった。それほどに力強い写真論だったボードリヤール『消滅の技法』

意味とレファレンスの総体である『ストゥディウム』に対置する、虚無、不在、非現実の記号である『プンクトゥム*1。イメージの魔術とパワーを生み出すのは、イメージの核心にある虚無だが、人はこの虚無をほとんどの場合意味作用の力によって排除してしまう。 (ジャン・ボードリヤール『消滅の技法』)

モノがすべての作業をなすのだから、写真は魔術である。写真家は決してこの事実を認めようとせずに、オリジナリティはすべて写真家のインスピレーションにある、世界をどう写真に捉えるかにある、と主張することだろう。こうして写真家は、自己の主観的な見方と写真撮影によって生まれた光の反射の奇蹟とを混同して、下手な写真を、言い換えれば、上手すぎる写真を制作する。(ジャン・ボードリヤール『消滅の技法』)

こんなことを言う人がさてどんな写真を撮るのか知りたくてたまらなくなったところで、きちんとボードリヤール自身の撮った写真もみることが出来る、半分写真集となった贅沢な本。

なるほど☆☆☆☆

消滅の技法

消滅の技法

*1:ロラン・バルトは、写真の二つの異質な要素を『ストゥディウム』と『プンクトゥム』と名付けた。どちらもラテン語。『ストゥディウム』は、仕事、研究等の意。『プンクトゥム』は、突くこと、点、瞬間等の意。