ビブリオマニアへの道

16−20世紀にヨーロッパで刊行された美本の図版が満載の荒俣宏『稀書自慢紙の極楽』は、ビブリオマニアの指南書のような本だった。ビブリオマニアとはなるべくしてなるもので、ビブリオマニアになりたいと思ってなるという人もそうそういないと思うけれど、ちょっととっつきにくい西洋の古書の世界に、これを一読したらより気軽に足を踏み入れてみる気になれると思う。
挿絵の美しい昔の洋書って、「素敵だな」と思っても、手が出せないほど高値なのだろうとはなから諦めてしまう人が大半だと思う。私も、美しい西洋の古書に憧れは持っていても実際に買おうと思ったことは一度もない。日本の古書店には、どこにでも一人で入る度胸はあるけれど、そうは言っても、自分のよく知らない分野の専門古書店にはちょっと入りにくいし、外国の古書店となるとますます入りにくく、旅先で古書店に入ったこともない。
私は、資金がないということを美本に手を出さずにいる一番の理由にしているけれど、荒俣宏は、そんなに経済的に豊かではなかった時からすでにビブリオマニアだった。本当のビブリオマニアって何を削ってでも本のためにお金を使えるのだろう。
荒俣宏は大学時代、本をコピーし、自分で装丁したりもしていたようだ。中学生のときは、アメリカから読みたい本を取り寄せたり、より幻想文学を読みたかったがために平井呈一に手紙を書いたりしている。荒俣宏の読書遍歴もわかり楽しい本だった。

稀書自慢 紙の極楽 (中公文庫)

稀書自慢 紙の極楽 (中公文庫)