偶然のチカラ

人生いかに善く生きるべきかというよりは処世術が書かれた哲学書よりも簡単でわかりやすい、それでいてちょっと読むのが恥ずかしいような本がある。この類の本には悩み多き時代に結構お世話になり、大体書かれてあることが予想できるようにもなったので最近ではわざわざ購入して読むことはなかった。でも、割と好きで読んでいる植島啓司が書いているからという理由で購入した『偶然のチカラ』には久々にそんな処世術系の本を読んでいるような気分にさせられた。例えば「その人は理想の相手か」「なぜ自分ばかり不幸になるのか?」「幸せとは何か?」等の章があり、サンクチュアリ出版の本なんかに勇気付けられていた頃など思い出し甘酸っぱい気持ちになった。
本の中では「うまく生きる秘訣はなるべく選択しないですますこと」とか、「あれかこれか」ではなく「あれもこれも」という状況に身をおくことなどが推奨されていて、モラトリアムを止めるつもりなく続けている私は「やっぱりこれで良いよね」とますます調子に乗った。運や偶然、確率の問題について古今東西のエピソードも引用されており、雑学本としても愉しめる。占いや宗教的なことについても当然触れられているけれど、偶然、私は昨年末まで2ヶ月間ほど非常に忙しく、睡眠時間をいつもの半分ほどに削って過ごしていた。その忙しいサイクルになった時、自然とすごく気にするようになったのが占いだったのだが、それはもう睡眠時間を削ってやるだけやったからあとは運次第、という気持ちが強かったからだろうなと思い返したりもした。「すべてはなるようになる」ということを説いたこの本。悩みを抱えた人に次に出遭ったときはおすすめしてみたい。

「なるようにしかならない」というのは「どうにもならない」という意味ではなかったのです。それは、あくまでも、「流れに逆らわないようにすべきである」という意味だったのです。
また、「自分の力」に頼らず、「何かに身をゆだねる」という場合にしても、単なる「神頼み」というわけではありません。いくら自分の力で臨んでも、どうにもならないときがあります。そんな困難なときに、自分に力を与えてくれるものであればなんでも受け入れるという謙虚な態度こそが必要だというのです。
植島啓司『偶然のチカラ』) 


偶然のチカラ (集英社新書 412C)

偶然のチカラ (集英社新書 412C)