『批判の回路』読了メモ

粉川哲夫の『批判の回路』を読了。粉川さんが1978年から1980年にかけて書いた文章がまとめられた論集だ。
「“SF”の語源学」、「天皇制=文化装置の構造」などテーマが多岐にわたり、飽きさせられない本だった。「横断的思考のための断章」という18章で構成された文章では、映画や歴史的事件等を紹介しつつ、この本が発行された1981年までの30年間ほどを中心とした左翼をとりまく状況が読みやすいかたちでまとめられており、「横断的思考のための」というタイトルにふさわしく、読後私の頭に少しオイルが注がれたような気になった。あるテーマについて、いろんな角度から書かれた文章を読んで同じ方向に向いたベクトルが重なった時の充足感は心地よい。私は、あるひとつのことからまわりにじわーっと広げる感じより、周辺から中心に向かうやり方が好みなのだな、と改めて思う。怠惰を研究する私には、特に17章「造反無理?」が面白く感じられた。紹介されているポール・ラファルグの『怠ける権利』、近々読みたいと思う。

批判の回路 (1981年)

批判の回路 (1981年)

怠ける権利 (1972年)

怠ける権利 (1972年)