冬を迎えるにあたり

クリスチャンではないのだけれど、なぜか私にとって、西洋の聖人とか天使は、馴染み深い存在である。小学校時代、「マイバースデイ」という占い・おまじない雑誌を愛読しており、そこでよく紹介されていたからかもしれない。

昨日、11月30日は、聖アンドレアスの日だった。聖アンドレアスは、ペテロの弟で漁師であったので、カトリックでは、漁業をする者の守護聖者である。11月30日は、グレゴリオ暦以前では大晦日であったようで、今日は昔でいうなら一年のはじまりの日だ。現在、祭はないようだけれど、習俗としてこの日、様々な占いがおこなわれているようである。この日の朝、泉や井戸をのぞくと水鏡に結婚することになる人が映るという預言もあるらしい。

ここ関西ではまだ紅葉が美しいけれど、「12月…本格的に冬だなぁ」と思い、本棚の植田重雄著『ヨーロッパ歳時記』を手にとり、ヨーロッパではこの時期、どんなことが行われている(いた)のか確認してみたくなった。それで、聖アンドレアスの日を確認し、近く12月4日は「聖バルバラの日」であることも確認。聖バルバラは、キリスト教に入信し、改宗を拒んだために若くして斬首の刑に処せられた女性だ。危急の死や苦難に出会った人々に救いをもたらす救護聖者として崇拝されたり、未婚の女性の守護聖者として敬われたりしているらしい。この日、人々は桜桃、杏、林檎の枝を切って瓶に挿し、クリスマスのころに蕾がほころび開花するようあたたかい部屋におく。そこに若い娘は、三つの願いごとを書いて枝に結び、クリスマスの日に枝が開花するとこの願いが皆叶うと言われているようだけれど、それが「第一には、その人がわたしを愛してくれ、第二には、その人がまだ若く、第三には、その人が物持ちであること」いう願い事に決まっているというのが面白くない。と言っても、私は若い娘ではないので、あまり関係ないけれど。


厳しい冬は憎まれがちな存在だ。私も、これから訪れるであろう厳しい寒さに身構えている。(といっても、昔の人とは比べ物にならない恵まれた環境なのだけれど。)冬のよさに気付いたクラウディウスの詩がこの本に紹介されていたので、冬を迎えるにあたり、この詩を頭の片隅に置いておきたい。

冬こそまっとうな人間だ
がっちりして長つづきのする
彼の身体は鉄のようだ
良いことも嫌なこともおそれない


石や骨が霜にくだけ
池や湖もパリッと割れる
それは冬だから快くひびく
冬はこれを厭わない
冬は死すらも笑おうとする

ヨーロッパ歳時記 (岩波新書 黄版 245)

ヨーロッパ歳時記 (岩波新書 黄版 245)