2007-01-01から1年間の記事一覧

テープ起こし

私が今までしてきた様々な仕事を思い出し、それぞれについて思うことを書いてみようかと思う。今現在、単発で引き受けている仕事がちょうどある。それは「テープ起こし」。ということで、この企画の栄えある第一回目テーマは、「テープ起こし」に決定。イン…

20世紀の画家たち

20世紀は、大量殺戮・戦争の世紀であった。徐京植の『青春の死神』は、20世紀前半、世界戦争の真っ只中に生きた画家31人の物語。とりあげられた何れの絵にも戦争の影と画家の戦争に対する態度が色濃く反映されている。ピカソの「ゲルニカ」やパウル・クレー…

少女の日記

矢川澄子著『アナイス・ニンの少女時代』を読んだ。アナイス・ニンは、ヘンリー・ミラーの恋人だったり、アントナン・アルトオを夢中にさせた美女ということで興味を持ち、『近親相姦の家』や『小鳥たち』を買って持ってはいたのだけれど、結局読まないうち…

のらくら者たち

フェリーニの『I Vitelloni 青春群像』を観た。30歳近くになってもぶらぶらしている5人の男(と彼らをとりまく人々)の物語である。1953年作品で、フェリーニの実質的なデビュー作ともされる作品のようだ。冒頭部分では、派手好きのフェリーニも、初期はこ…

ジュニア向けの本

30歳も間近だけれど、岩波ジュニア新書『砂糖の世界史』を読んだ。著者は『路地裏の大英帝国』『洒落者たちのイギリス史』等を書いた川北稔だ。岩波ジュニア新書であっても、気になる人が書いているとつい買ってしまう。ちくまプリマーブックスも10代向けに…

四天王寺のカメ

四天王寺の古書市に行った。はじめて行ったから常にそうなのかわからないけれど、規模がちょうどよくて良いな、と思った。下鴨神社の古書市などは、出店数が多すぎて全部みるのに疲れるけれど、今回の四天王寺の古書市は、全店じっくり一回まわって、もう一…

料理のうた

見事なモカの樹の茂るかぎり、 木の実がパチンと音をたて、 珈琲挽きがうごいている間、 銀製の器から 湯気をたてた流れがすべり、 支那の陶器が 黒い潮をうけとめている間、 珈琲が、ブリテン島の妖精に 親しいものである間、 芳香の流れが 下れた頭を元気…

死体本

タイトルに死体という言葉がはいった本を二冊続けて読んだ。布施英利著『禁じられた死体の世界』と原克著『死体の解釈学』。布施さんは、美学への関心から解剖学の世界にはいったちょっと特異な人だ。 「死体は怖くない」「現代という社会は、死体を真正面か…

ブルーエット人形

白水社の文庫クセジュシリーズは、情報がふんだんに盛り込まれていて教科書的なので、何かについて調べたい時、とても参考になる。ただ、読み物としては、教科書がそうであるように、事実の羅列が続く部分が多く、余程そのテーマに関心がなければ読んでいて…

グミベアーと王様

ミヒャエル・ゾーヴァの画は、映画『アメリ』で、アメリの部屋にも飾られているし、どこかで目にしたことのあるという人は多いと思う。彼が挿絵を描いているアクセル・ハッケの本、「ちいさなちいさな王様の話」を読んだら食べたくなるお菓子はグミベアーだ…

子供の十字軍

『子供の十字軍』という本を手にとり、「確か、少年十字軍ってあったよな・・・あれ、それとは違うのかな」などと思いながら読み始めた。1941年にベルベルト・ブレヒトが書いた詩である。山村昌明の銅版画とともに、たった一篇の詩ではあるがきちんとした一…

文章に書かれた貧乏

あまりにお金がなくなりすぎて、赤瀬川原平(選)『全日本貧乏物語』を読んで参考になる箇所はないか探してみた。参考にはならなかったが、悲惨なまでの貧乏を描いているのになぜか笑える文章が多く、皆、たくましくやっているな、と、本を読むまでは現状脱…

『批判の回路』読了メモ

粉川哲夫の『批判の回路』を読了。粉川さんが1978年から1980年にかけて書いた文章がまとめられた論集だ。 「“SF”の語源学」、「天皇制=文化装置の構造」などテーマが多岐にわたり、飽きさせられない本だった。「横断的思考のための断章」という18章で構成…

薬みたいな本

香山リカの『老後がこわい』を読んだ。女で一人暮らしをしていて、安定した仕事についていなくても、出来るだけやりたくないことをせずに暮らしたいと思っている私は、将来への不安を打ち消すために様々な思考方法を取り入れてなるべく不安を抱かないように…

リンゲルナッツという詩人

池内紀の『ぼくのドイツ文学講義』を読んで、リンゲツナッツ(たつのおとしごという意味らしい)という詩人のことを知った。池内さんが、まえがきで「大好きなリンゲルナッツとその訳者について、書くことができたのはうれしかった」と書いているだけあり、…

ゲームブックの思い出

ファミコンが売り出されたのは1983年だ。私が小学生だった頃は、ほとんどの子がファミコンを持っていた。私は、ファミコンを持っていなかったので、友達の家に行ってファミコンをやらせてもらうのがとても楽しかったことを覚えている。せっかく友達の家に行…

パチンコと日本人

外国人の目からみると日本はどう見えるのか、ということを知るのは面白い。ドナルド・リチーの『イメージ・ファクトリー』は、そういう理由でぐいぐい読むことが出来た。早速、訳者あとがきで、日本人はとりわけ「日本文化論」を好きな民族であると書かれて…

文学作品における部屋の描写

海野弘の多作ぶりには本当に驚いている。本屋に行って面白そうなタイトルだと思ってみてみると「あ、これも海野弘が書いているのか」と思うことが多い。今回読んだのは、 『室内の都市−36の部屋の物語』だ。文学作品に描写された部屋についてのエッセイが3…

読んでみるものだ

『存在の耐えられない軽さ』で有名なミラン・クンデラの『緩やかさ』という小説を読んだ。ミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』は読んだことはないし、映画さえまだみていない。彼の他の作品についても読んだことはないので、はじめて読んだのがこ…

いちブロガーとして(2)

高校野球のニュースはつい気になってみてしまう。ついでに言うならオリンピックのニュースもついついみてしまう。普段、スポーツには関心を持てないでいて、あまりに関心を持てないでいることがかえって悩みであるのにも関わらず。試合を何が何でもみたいわ…

いちブロガーとして

時代の速度についていくのは大変だ。携帯電話は、高校のクラスの40人中30番目くらいに使い始めた。大学時代は、レポートを作成するためだけにパソコンを使用していた。大学を卒業してからは、テレビをビデオやDVDをみるための液晶としてしか使用していな…

死のイメージの遊園地

最後に遊園地に行ったのはいつだったか、たぶん、8年くらいも前だ。これから死ぬまでに遊園地には何回行くことがあるのだろうか、観覧車やジェットコースターには何回乗るのだろうか。エキスポランドでのジェットコースターの死亡事故と韓国での観覧車の死亡…

食事と気分

森茉莉生誕百年を記念して出版された『森茉莉 贅沢貧乏暮らし』という本がある。森茉莉の文章の中に出てくる食べ物を再現した頁が多い。料理の写真は、どうしても文章によって膨らんだイメージに程遠く感じてしまう。けれど、いつか自分で彼女の著作の中の食…

林芙美子になりきる

成瀬巳喜男の『放浪記』で林芙美子を演じた高峰秀子は私に強烈な印象を残した。一度観ただけだが、様々なシーンを鮮明に思い出すことが出来る。その印象の強さは『浮雲』(これも原作は林芙美子)の名演さえかすむほどなのだ。高峰秀子のちょっと低めの声で…

まつりのあと

斎藤美奈子の『趣味は読書。』によると(2003年発行の本なので、現在とはちょっと状況が違うかもしれないが)、もし日本が100人の村だったら、趣味として本に一定のお金と時間を割く人はせいぜい4、5人といったところ(数にして500〜600万ほど)のようだ。大…

トランスセクシャルの可能性

「やおい」という言葉はずっと知らなかったけれど、友達に、私の好きな作家の1人を「やおいの人でしょ?」と言われ、その言葉を知った。どうやら、1980年代くらいからコミケに集う同人誌作家たちの間で使われるようになった造語で、「ヤマなし、オチなし、イ…

権力空間としての江戸

最近、現代日本のプレカリアートと江戸の都市下層民は似ているな、とずっと思い続けていているのだが、研究テーマとして面白いな、と思っているので、続けてみようと思う。前回、江戸をユートピア的にとらえている杉浦日向子さんについて書いたが、今回は、…

オーケストラ・リハーサル

フェリーニの『オーケストラ・リハーサル』 (1979年)を観た。フェリーニ作品の中ではそんなに有名ではないと思うけれど、ニーノ・ロータとコンビを組んだものでは最後の作品だ。もともとテレビ番組用に作られたらしく、いつものように豪華なセットがあるわ…

プレカリアートと江戸っ子

杉浦日向子さんが2005年7月に亡くなってから二年ほど経った。ちょうど亡くなる直前に、杉浦さんの本を好んで読み始めたので、亡くなったと知って非常に残念に思った。どちらかといえば、江戸をユートピア的にとらえている杉浦さんの本。小谷野敦の『江戸幻想…

ヌーヴェル・バーグの始まり

DVD『美しきセルジュ/王手飛車取り』を観た。『美しきセルジュ』のほうは、クロード・シャブロル監督の処女作だ。1957年作品で、この作品の成功がヌーヴェル・ヴァーグの始まりとなったと言われている。「ヌーヴェル・ヴァーグらしいな」と、感じさせられ…